集合知とはどのような知識か
本論
まず、『集合知プログラミング』(Toby Segaran・著、當山仁健・訳、2008年)(pp.2-3)から説明を再構成する。
- 作者: Toby Segaran,當山仁健,鴨澤眞夫
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2008/07/25
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一般に用いられる集合知という言葉は「集団の意識や超常現象を想起させる」ことを意味するが、技術者が用いる場合には、未知の知見を「集団の振る舞い、嗜好、アイデアを結びつけること」によって生み出すことを指す。
沢山の人々の回答を利用するという意味では、インターネット以前にも世論調査という形で集合知は実践されてきた。つまり、集合知とは「独立した貢献者たちから新たな結論を作り上げること」である。言い換えれば、集合知はそれを生成するためのプロセスや方法論を必要とするのである。
集合知のよく知られている例として経済市場が挙げられ、そこでは「価格は個人や協調によって決められるのではなく、多くの独立した人々のそれぞれが、もっとも利益を得られると信じて行動する振る舞いによって決まる」。つまり、集合知の生成プロセスの元となる個人の行動・判断は本人の意思に基づいて行われ、他人の判断とは独立したものである。
集合知におけるWebの意義は、インターネット利用者の行動をモニタリングすることによって「利用者の邪魔することなしに」情報を抽出・処理・解釈することが可能なことにある。対称的なアプローチとしてWikipediaとGoogleを例に挙げると、Wikipediaは大規模な百科事典を作り上げることに成功しているが、記事の編集・管理にはあくまで人手を必要としており、ソフトウェアが人々の貢献に関わっている部分はない。一方でGoogleでは、ページ評価アルゴリズムのPageRankを用いて、利用者のデータに基づいたWebページのスコアリングを行っている。重要なのは「単に情報を集め表示することではなく、情報を知的な方法で処理し新たな情報を生み出すことである」。
また、『集合知の作り方・活かし方』(石川博・著、2011年)によれば、情報爆発によって質的に増大する情報の多様性を集約することで、「浮かび上がってくる構造や意味の中にいわゆる集合知が現れる」(p.2)としている。「集合知」という言葉の操作的定義は行われていないが、検索エンジンが検索結果の多様性を保障することの限界を指摘しつつ、数学的な集合概念を用いた対処方法について議論している。石川氏にとって集合知とは、情報の多様性を解決したものであると言えそうである。
集合知の作り方・活かし方 ?多様性とソーシャルメディアの視点から?
- 作者: 石川博
- 出版社/メーカー: 共立出版
- 発売日: 2011/08/24
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